ハイスペック&らくらく操作の最新補聴器『GENESIS AI』(スターキー社)

補聴器で重視される性能は、人によってさまざまです。ただ、音質の良さから、雑音の低減、充電性能まで……あらゆる要素が高水準で、しかも直感的に操作しやすい補聴器があれば、誰もが興味を持つのではないでしょうか。

今回ご紹介する、スターキー社の新型補聴器『GENESIS AI』は、まさに全てが揃うハイスペック補聴器。これまでも『エボルブAI』など評判のよい補聴器を提供してきた同社の自信作となっています。

そこで今回のブログは、スターキージャパンの西村啓司社長に、私、ドリーム補聴器の福澤がインタビューを行い、その性能を徹底的にお伝えする対談編となっています。

従来の4倍の処理速度を実現したハイスペック処理機能

福澤:今回新発売となった『GENESIS AI』ですが、カタログを拝見しただけでも非常に高性能だと分かります。

西村社長(以下、西村):細かいスペックについては追々語らせていただくとして、『GENESIS AI』の根幹にあるのは、徹底的なユーザー目線です。これまでも、スターキーは良い補聴器を提供してきた自信がありますが、スペックがそのまま使用者の快適さに直結するほど単純な話ではありません。より高い性能は、どうすればより使いやすくなるのか。ユーザーに生活が良くなったという実感がわくように考えて作った補聴器となっています。

「『GENESIS AI』の開発は発想の転換からはじまり、操作性、快適性、信頼性と堅牢性の追及に5年の年月をかけており、基礎的なスペックも大幅に向上させることができました。

福澤:『GENESIS AI』のキャッチコピーが「どんな場所でも、快適に『きこえる』喜びを。」となっていますが、アンケート結果も非常にいいですね。「静かな場所での聴き取り」で満足度が93%、「騒がしい場所での聴き取り」が84%と高評価です。

西村:『GENESIS AI』の性能をわかりやすく伝えるにはと知恵を絞りました(笑)。

聴こえに関する性能を支えるのが、既存製品の6倍のトランジスタ、10倍のシステムメモリで音声処理を行う「Starkey Neuro Processor」です。これらの数字ではピンとこないかもしれませんが、1時間に8,000万回も自動調整している、と言えば少しは実感として伝わるでしょうか。

福澤:処理速度の速さと聴こえは、非常に密接ですからね。

西村:はい。音はその一瞬一瞬で目まぐるしく変わります。数秒前には最適だった処理が、次の瞬間にはそうでない場合がある。だから、スピーディーで滑らかな音声処理は優れた音質に直結するのです。瞬間快適という言葉は、こうした課題の克服から生まれたものとなっています。

聴き取りやすさと聴き心地の両立を実現

福澤:聴こえに関していえば、カタログに載っている「聴き取りやすさ」と「聴き心地」の両立についても、それぞれの違いを含めて解説をお願いしてよろしいでしょうか。ブログの読者さんも気にされるかと思うので。

西村:わかりました。では、その話に行くために、まずは補聴器による音の再現、その基本的な性能について説明をしましょう。

人間が聴くことのできる音の大きさの範囲をダイナミックレンジといい、健常な方でも120㏈とされています。一方で、従来の補聴器で対処できるのは、およそ80dBでした。そうなると補聴器のダイナミックレンジを超える音は拾うこと自体はできるものの、そのまま再現することはできません。補聴器で再現可能な音域まで、音を歪める必要があったのです。

『GENESIS AI』はダイナミックレンジを118dBまで拡張したため、音の歪みを抑え、より自然な音に、かつノイズになりやすい音域を従来比で40%抑制することに成功したのです。

福澤:音を正確かつ素早く処理する機能に加え、正確に拾う機能と、再現する機能も向上しているというわけですね。

西村:はい、そのうえで「聴き取りやすさ」と「聴き心地」の差になっていくのですが、「聴き取りやすさ」は外有毛細胞、「聴き心地」は内有毛細胞という細胞が、それぞれ耳の中で働くことで脳に認識されます。

そして、これまで補聴器の音は増幅すれば聴き心地が悪くなりやすく、小さく再現すれば、聴き心地は悪くないものの何を言っているのかわからない、という状況になりがちでした。解像度の低い画像を無理に拡大すれば、画質がガビガビになってしまうのをイメージすると分かりやすいかもしれません。

これに対して『GENESIS AI』は高速と低速、2つのコンプレッサー(音の増幅量を変化させる回路)の働きで、両方の働きを補うことに成功。音を大きくしても聴き心地が良い状態を創り出します。また聴き取りに重要な子音部分、たとえば「サ」行の音などを補うために3,000Hz以上の音をより増幅するなど、聴き取りやすさを聴き心地につなげる機能にも優れているのです。

聴こえに加え、着け心地も非常に快適

福澤:これだけ高性能だとQOLが向上した状況がイメージしやすくなります。ずっと補聴器を着けて生活したくなってきますね。

西村:実は、そのずっと装着していたくなる補聴器というものこそ、私たちの目指した姿であり、そのための工夫が随所に凝らされています。

例えば、先ほど『GENESIS AI』の高性能ぶりを話しましたが、これだけ機能を盛り込んで、内部で目まぐるしく処理が行われていてはバッテリーの減りも速いのではないか?と思われなかったでしょうか。

福澤:思いました(笑)。

西村:そうですよね(笑)。ただ、実際は『GENESIS AI』はバッテリー効率が向上しており、従来品に比べて電池消費量が25%削減されています。さらに言えば、『GENESIS AI』は、満充電の状態であれば最大2日間の連続使用が可能となっているのです。

福澤:さまざまな機能が詰め込まれた補聴器は勿論、仮にワイヤレスイヤホンだったとしても、充電無しで丸2日使えると言われれば、そのバッテリーの長持ち具合が伝わりますね。

西村:はい。しかも、バッテリーの性能向上は『GENESIS AI』の目玉の一つですが、ずっと装着してもらうための工夫は、これだけではありません。

形状にご注目ください。

よく見るとわかるかと思いますが、『GENESIS AI』は、V字型のデザインとなっており、耳にぶつからないナチュラルフィットを実現しています。このV字型は、綿密な研究による人間工学の粋を極めたデザインで、この工夫によって、耳の後ろのくぼみに補聴器が届かない設計になっています。耳の後ろのくぼみは補聴器の天敵である汗がたまる場所ですから、耐久性に大きく関わるわけですね。

従来基準を超えるビヨンドIP68基準

福澤:汗と言えば、よく補聴器の防水・防塵性能を表すための表記としてIP68というものがよく記載されていますが、『GENESIS AI』の場合は「BEYOND IP68」と書かれていますね。それだけ防水・防塵に自信があるということでしょうか。

西村:そうなんです。ずっと装着していたくなる補聴器のためには、汗を気にせず使ってもらうことをとても重要視してきました。もちろん、これまでのIP68基準も十二分に優れた性能ではありました。ただ、さらに高い堅牢性を求めた結果、内部コーティングにも余念のない製品となり、IP68基準を超えた試験に合格できたのです。

IP68基準の時点で、水深1メートルの中に30分放置しても問題のないことを証明する必要があります。今回は、それすらを越えるために空気中の細かな分子にまで配慮した設計となっており、「自分は汗っかきだから」と悩まれている方や、「運動や移動でよく汗をかく」という方にもおすすめできます。

福澤:なるほど。先ほどの形状による不快感の低減もそうですが、本当に使用者の生の声を拾ってきて、製品に反映されていることがよくわかります。

使用者の想いに応えるエッジ機能

西村:そうですね。ただ、どれだけ性能を上げても補聴器はあくまで機械なので、本当に使い心地をよくするには、使用者によるカスタマイズが必要だと考えています。

福澤:聴き取りが難しい環境下でも、自分の望むモードに切り替えて聴こえをサポートする「エッジモード」などはその例ですね。

西村:はい、エッジモードには「最適化」「会話の強調」「雑音の抑制」という3つのモード*が存在し、自分の聴きたい要素を強めてきくことができます。これを使うためには、専用スマホアプリ「My Starkey」が必要になるのですが、このアプリも直感的に操作できるよう、大幅な改善がされています。スマホをお持ちでない方には全クラスに対応したリモコン「StarLinkリモコン」での操作も可能です。ボタンの数も少ないシンプルなリモコンなので、使用時に迷われる方は少ないかと思います。

福澤:このリモコンは良いですね。音量ボタンとエッジモードの起動ボタンと、切り替えボタンだけなので、非常にわかりやすいです。やっぱり、細かいところや好みの問題は個人のチューニングが必要ですから、こういう製品でハードルが下がると補聴器自体の使い心地に直結しますね。

西村:あとはジオタグ(スマートフォンなどに使われている位置情報の記憶)というのもあります。スマホアプリが必要になりますが、使用者がよく訪れる場所を登録しておくことで、その場所を訪れた際、自動的に設定したモードに切り替わるというものです。

福澤:自分の大切な場所がどんどん増えていくようで楽しそうですね。

補聴器はぜひ専門店でのご相談を

西村:ただ繰り返すようですが、どれだけ機械の性能が向上し、使いやすいようになっても、最終的には使用者が自分に合った使い方ができるか、が重要になってきます。モード切り替えやジオタグなど、カスタマイズ性を残してはいるものの、それを使いこなすにはきちんとした初期設定が必要になってきます。

だからこそ、補聴器を新たに購入される際は『GENESIS AI』に限らず、きちんとした補聴器専門店で購入し、認定補聴器技能者の方からちゃんとした使用法を教わることが重要です。

福澤:補聴器専門店を代表してお礼を言わせていただきます(笑)。最後に『GENESIS AI』はどんな方に特に使っていただきたいかを教えてください。

西村:まずは、ご自身にあった補聴器がまだ見つかっていない方です。『GENESIS AI』の性能なら、さまざまな悩みに対応できますが特に音質にこだわりのある方、普段からよく汗をかく方、補聴器の着け心地や装着感など外的なストレスに悩まれている方々にもおすすめいたします。

福澤:補聴器にありがちな悩みから要望まで、幅広く対応できるのは『GENESIS AI』ならではですね。今回は、新製品の魅力をたっぷり語っていただき、ありがとうございました。この製品の良さをきちんとお客様に伝えられるように、我々自身も使ってみたいと思います。今後も、スターキーさんの魅力的な製品開発に期待しています。

*クラス24、20のみ。クラス16は最適化1モードとなっています。