ユーザーの意図に即応。“聞きたい”“や”したい”ことをアシストして音をとらえる先進補聴器「OticonIntent™(オーティコン インテント)」

毎回、各社の優れた補聴器を紹介しているこちらのブログ。これまでにもたくさんの高機能補聴器を取り上げ、いかにして周囲の音環境を捉えて処理しているかを説明してきました。しかし、今回紹介するオーティコンの最新補聴器「Oticon Intent™(オーティコン インテント)」(以下Intent(インテント))は、そのスペックの高さを生かすことでいかに補聴器ユーザーの“聞こえの意図”をくみ取るかに特化した製品となっています。

そこで今回はオーティコンブランドを日本で展開するデマント・ジャパン株式会社の齋藤徹社長に私、福澤が話を伺い、新製品の魅力と特徴について語っていただきました。

“聞きたい音”を聞きやすくするよう、より自然に処理して脳に届ける

福澤:これまで「Real(リアル)」や「Own(オウン)」など、優れた補聴器の発表によって、ユーザーの生活をより良いものへと変えてきたオーティコンですが、新製品「Intent(インテント)」の特長はどこにあるのでしょうか。

齋藤:オーティコンが補聴器を開発するうえで大切にしているのが「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」の考え方です。その名の通り、脳で聞く…つまり、音を拾う耳の役割を補うだけでなく、その音を脳が理解・認識しやすいように整えて届けるというものです。

オーティコンはこのコンセプトを体現すべく、これまでもさまざまな補聴器を開発してきましたが、「Intent(インテント)」ではユーザーの意図を補聴器の技術に反映させることを目指しました。

福澤:まさに「Intent(意図)」に沿って聞こえを届けるわけですね。

齋藤:はい。そしてそれを可能にしているのが、製品の根幹を支える4Dセンサー、通称「じぶんセンサー」という機能です。

福澤:いわゆる加速度センサーを用いた機能だと思うのですが、面白いネーミングですね。

齋藤:ありがとうございます。ユーザーの方に親しみを持っていただければと考えたネーミングです。会話活動、音環境、身体の動き、頭部の動きという4種類のセンサー入力を組み合わせることで、装着している方の”意図”に応じて聞こえをサポートします。

福澤:4種類のセンサーのうち、会話活動や音環境を感知して最適化する機能は以前の製品でも備わっていたかと思います。一方で、身体と頭部の動きを感知する機能というのが新しいですね。

齋藤:はい、この2つの側面で動きを感知するセンサーによって、頭や体のちょっとした動き、同時に会話や周囲の音環境、それぞれを統合して補聴器が判断することで、環境の音と聞きたい会話のバランスをより適切な形で処理することが可能となりました。場面に応じて脳が聞きたい音に集中しやすいように、自然な聞こえを届けてくれます。

さらに補聴器に搭載されている高度な人工知能「ディープニューラルネットワーク(以下、DNN )2.0」の力によって、拾った音をより高精度かつクリアに処理。会話音声や環境に存在する意味のある音を従来よりも自然に際立たせて届けてくれるようになりました。

福澤:前世代のDNN1.0は確か1200万の音の情景を学習した人工知能(AI)だったかと思います。DNN2.0のサウンドサンプルはいかほどなのでしょうか。

齋藤:実はDNN2.0では、確かにサウンドサンプルの数も増えているのですが、それ以上により聞き取りが困難な音環境を開発の段階で高度に学習させていることで、騒がしい環境でもそれぞれの音の特徴を損なわずに正確な処理が可能となり、騒音下での“きこえ”を邪魔するノイズもしっかり抑制できるようになったのです。

福澤:そのほかにDNN2.0の学習で進化したところはありますか?

齋藤:これまで24チャンネルで処理していたものを「Intent(インテント)」では256チャンネルで処理しています。ここでいう処理とは、データの比較分析ですね。チャンネルが多いと、環境の音をより正確に捉え、なおかつ会話音声を含む必要な音を際立たせてクリアに届けることが可能になります。また、補聴器が対応できる周波数帯域や実際に音を出すスピーカーユニットも進化していますので、耳に届く音そのものも、より上質となるように努めました。

福澤:なるほど。じぶんセンサーの働きで意図をくみ取って必要な音を聞きやすくし、それを今までよりも進化した人工知能で正確に処理、さらにこれまでよりも自然かつ良い音で耳に届けてくれるというわけですね。

テクノロジーの進化を示す科学的エビデンス

齋藤:まとめてくださり、ありがとうございます。なお、新しい技術がどのようにユーザーに役立つかを調べるために、さまざまな試験を実施済みです。技術測定の結果、前世代の補聴器の「Real(リアル)」と比較して、騒音があるなかで1対1の会話を聞く際に35%多くの言葉の手がかり(スピーチキュー)が届けられるようになったという結果が出ています※1。また、被験ユーザーの主観評価ではいくつもの好結果が出ており、「音質」と「聞き心地の良さ」でともに10%、「音の細かいニュアンスの分かりやすさ」は13%も「Real(リアル)」と比べて向上したという結果も出ました※2。

福澤:これは、じぶんセンサーの働きが大きいのでしょうか。

齋藤:そうですね。実は「Intent(インテント)」のじぶんセンサーをON/OFFした状態で、会話と騒音が混在するリアルな環境をVR(バーチャル・リアリティー)で疑似体験していただきながら音声の理解がどれほど変わるかを調べた実験も行いました。その結果、他の邪魔になる会話があるなかでも、ONの状態だとOFFの状態と比べて、聞きたい音声の理解度が15%も向上していることが判明しています※2。やはり、センサーによるサポートがあることで理解がしやすくなっているのだと思います。

福澤:新機能のおかげで、「Real(リアル)」よりも全体的に性能が向上しているんですね。以前のRealの機能はそのまま受け継いでいますから、単純に性能面だけを見れば「Intent(インテント)」の方がユーザーの生活改善に繋がるだろうとの期待が持てますね。

耳にフィットし、抜けにくい形に改良

齋藤:ここまでは「Intent(インテント)」の意図をくみ取るセンサーや音の処理についてご説明をしましたが、着け心地や充電性能などの面でもこれまで以上の製品に仕上がっていることをご説明させてください。

福澤:ぜひお願いします。

齋藤:まずお伝えしたいのが着け心地を向上させるためのデザイン面での改良です。従来の同じスタイルの補聴器より全長を1.7ミリ短くしました。それに加えて見ていただきたいのが、耳の中に入るスピーカーユニットの角度です。

福澤:確かに、以前のものと比べて耳に入る角度が全く違いますね。これだと外耳道にフィットして抜けにくくなりそうな印象です。

齋藤:私たちが目指したのもまさにそれで、人間工学に基づいてどうすれば耳にフィットして、不安なく使っていただけるかを研究し、この形に落ち着きました。

充電時間が2/3に短縮、15分で4時間使える

福澤:なるほど、性能を向上させながらもサイズは小型化。さらに耳へのフィット感も改良されたのですね。あと気になるのが、「Real(リアル)」以前にはなかった、端子のようなものがありますが…

齋藤:よく気がつかれましたね(笑)。これこそが次でお話ししようとしていた充電機能の肝でして、実は「Intent(インテント)」は「Real(リアル)」と比べて33%も充電時間を短縮させているんです。

福澤:33%短縮…今までの充電時間の2/3に当たる2時間でフル充電が可能ということですね。15分間の急速充電によって、4時間も使えるということも伺っています。毎日使うからこそ、たまに充電し忘れることもあるわけで、そうした人を救ってくれる有難い性能ですね。

齋藤:充電器の通電状況はLEDランプで確認できるので、充電したつもりができていなかった…という事態も避けられるようにできています。また、オーティコンのコンパニオンアプリを介して補聴器と通信し、充電器に入れたままでも充電状態を調べることもできるようになっています。これはちょっとしたことのように思えるかもしれませんが、毎日の充電を確実に確かめるために大いに役立つ機能です。

また「Intent(インテント)」では補聴器を実際に耳に着けている時間の計測ができるようになっています。

福澤:確かに、これまでは補聴器を起動している時間を補聴器の使用時間と計測する製品がほとんどでしたが、実際は電源の入ったまま装着していないこともけっこうありましたからね。そういう意味でもユーザーのリアルな日常に寄り添った製品というのが伝わってきます。

齋藤:他にも、補聴器をダブルタップすることで接続したスマートフォンの通話に素早く出られる機能※3や次世代Bluetooth®のLE Audioに対応した機器とのダイレクト接続機能など、本当にたくさんの機能が盛り込まれているので、ぜひ多くの方に手に取っていただきたい製品なんです。

騒音下の“きこえ”に悩む方、アクティブシニアにおすすめ

福澤:これだけの高性能となると、できるだけ多くの方に試してもらいたいものですが、特にこういった悩みを持つ方に使ってほしい…といったイメージはございますか?

齋藤:そうですね、もちろん全ての補聴器ユーザーに使っていただけるように…とは考えています(笑)。ただ、その中でも特にということであれば、やはり「騒音下での“きこえ”に悩まれている方」や「長時間の使用に慣れていない方」にオススメしたいです。

あと「Intent(インテント)」は大人数での会話の場面でも活躍するので、そうした場へ赴くことの多いアクティブシニアの方にも是非使っていただきたいです。

福澤:騒音下での“きこえ”は、人によっては疲労を感じることもあって非常に重要なファクターですからね。

齋藤:それこそ「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」の話につながりますが、聞こえと認知、脳機能は非常に密接な関係にありますからね。オーティコンが昨年開いた国際シンポジムのテーマは「聴覚ケアはヘルスケア」というものでしたが、そこに関してはこれからも重視していきたいと考えています。

スペックが高い補聴器こそ、専門家からの説明が重要

福澤:しかし、スペックがこれだけ優秀だと、ユーザー一人ひとりに対してそのすべてを適切に伝えるのは大変ではないでしょうか。

齋藤:そうですね。やはり補聴器自体がそうであるように、どれだけスペックが高くてさまざまな機能を備えていても、それを使いこなせないとユーザーにとってのベストな選択肢にはなり得ません。また反対に、自分に合わないと感じていた補聴器も専門家の手で最適な調整をすることで、実はとてもマッチした補聴器だったという可能性もあります。

福澤:確かにいい製品だからこそ、その良さや使い方を分かりやすく、実感の持てる形で伝えることは、店舗販売を行う私たちにとって、とても大切な要素となります。

齋藤:お客様の一番近くでメーカーとユーザーの両方を支えていただいている専門店の重要性は私たちも常々感じています。実はオーティコンでは、聴覚ケア専門家のためのツール開発にも取り組んでおり、製品開発以外でも補聴器に関わる方がよりよい日常を送れるように取り組んでいるんです。

福澤:“きこえ”に関わる専門家の端くれとして、こうしたメーカー側の試みは非常に有り難いです。私たちも、製品の良さや使い方を上手に伝え、ユーザーの生活改善を加速させていけるように頑張ります。

※1:Brændgaard, M., Zapata-Rodríguez, V., Stefancu, I., Sanchez Lopez, R., Santurette, S. (2024). 4D Sensor technology and Deep Neural Network 2.0 in Oticon Intent™. Technical review and evaluation. [White paper]. Oticon

※2:Bianchi, F., Eskelund, K., Zapata-Rodríguez, V., Sanchez Lopez, R., Gade, P. (2024). Oticon Intent™ – Clinical evidence. BrainHearing™ benefits of the 4D Sensor technology. [White paper]. Oticon.

※3: オーティコンインテント1-3で利用可能。ハンズフリー通話に対応するiPhone, iPad並びに一部のAndroid製品に対応