補聴器を使用することで生活は豊かになるのに、なぜ聴力が低下している方の大半は、まだ補聴器を手にしていないのでしょうか。その大きな理由として、「周囲に補聴器を使用していることを知られたくない」という、補聴器に対するネガティブな印象が根強く残っていることが考えられます。
そこで今回のブログでは、耳あな型補聴器の「新たなカテゴリ」として誕生した、オーティコン補聴器の『Zeal(ジール)』をご紹介します。1円玉ほどのサイズに先進技術を凝縮し、快適な装用感を目指した『Zeal』の特長について、オーティコンブランドを日本で展開するデマント・ジャパン株式会社の齋藤徹社長に詳しく伺いました。

目次
1円玉ほどのサイズに技術を集約!小型化を支える製造技術とは
福澤: 近年はコンパクトな補聴器が増えていますが、それでもまだ「補聴器=目立つ」というイメージを持たれている方は多いですよね。その点『Zeal』は、そんな印象をガラリと変えてしまうくらい、補聴器らしくないスタイリッシュなデザインだと感じました。

齋藤: ありがとうございます。まさに『Zeal』の最大の特長は、その「目立ちにくい形状」にあります。開発にあたっては、1500人以上の実際の耳型データを集め、サイズ感やカーブの曲がり具合を徹底的にシミュレーションしました。これにより、より多くの方の耳に自然にフィットする形を導き出しています。
さらに、この1円玉ほどのサイズを実現している要素の一つが、「カプセル化」という製造工程です。従来の補聴器は「シェル」と呼ばれる空洞のケースに部品を組み込むため、部品同士が干渉しないよう一定のスペースが必要でした。しかし『Zeal』は、基板ごと樹脂で固めて形を作ることで、部品を高密度に配置しやすい構造となっています。

福澤: 「カプセル化」によって小型化を実現しているとのことですが、耐久性の面ではどのような特長があるのでしょうか?
齋藤: 実はこれ、宇宙船や潜水艦など、非常に過酷な環境で使われる部品にも採用されている製造技術なんです。樹脂で密閉する構造により、熱や摩耗、落下などの衝撃に配慮した設計となっています。
福澤: 補聴器の故障原因の多くは、汗や湿気によるものですからね。今年の夏も、弊社には修理のお問い合わせが多く寄せられました。そうした水濡れや故障のリスクに配慮したこの技術は、長く使うお客様にとって検討材料の一つになりますね。

装用時の「抜け落ちる不安」に配慮。アンテナ形状が支える安定感
齋藤: 補聴器には大きく分けて、耳に引っ掛ける「耳かけ型」と、耳の穴にすっぽり収まる「耳あな型」があります。「耳あな型」は比較的目立ちにくいのですが、これまではオーダーメイドで耳型を取る必要があったため、完成までどうしても日数がかかっていました。しかし『Zeal』は、耳あな型でありながら、ご購入いただいたその日にお持ち帰りいただくことも可能です。

福澤: 耳あな型というと、一人ひとりの耳に合わせる必要があるイメージがありますが、『Zeal』では装用時のフィット感をどのように調整するのでしょうか?
齋藤: 本体の先端に既製の「ドーム」と呼ばれるイヤピースを装着するのですが、サイズや聴力に合わせて数種類の中から適したものをお選びします。もちろん、既製のドームが合わない場合には、耳型を採取して専用のモールドを作ることも可能です。その場合は数日かかりますが、より安定して装用することができます。

福澤: 基本はすぐ持ち帰れる「既製品」スタイルでありながら、「オーダーメイド」のイヤピースにも対応できる。まさに、今までにない新ジャンルの耳あな型補聴器なんですね。
齋藤: おっしゃる通りです。そして、さらにフィット感に配慮しているのが、Bluetooth通信用のこの「アンテナ」です。通常の耳あな型はアンテナを本体に内蔵しますが、『Zeal』はあえて外に出し、耳のくぼみに沿わせるカーブ状に設計しました。これにより本体の小型化につながるだけでなく、補聴器を耳にしっかり固定する役割も果たしています。

福澤: 実は、既製品の小さな補聴器に対して「ポロっと抜け落ちてしまうのでは?」と不安を抱くお客様もいらっしゃいます。この柔軟なアンテナが耳のくぼみに沿って収まり、つっかえ棒のようにフィットしてくれればより安心ですね。しかも耳の外にはみ出さないから、見た目も目立ちにくい。

齋藤: ええ。さらに特徴的なのが、精密機器のアンテナでありながら、「取り出し用のテグス」としての耐久性も備えています。外す時は、このアンテナを持って取り出していただけます。そのまま引っ張っていただいて構いません。実際に使われた方からも「目立ちにくく、安定感がある」といったお声をいただいています。
会話や環境音をバランスよく届けることを目指す。音を聞き分ける脳の働きをサポート
福澤: 近年はAI技術によって補聴器が大きく進化していますが、『Zeal』に搭載されているAIの役割について教えていただけますか?

齋藤: 私たちは長年、音を聞く際の「脳の働き」やメカニズムなど、聴覚そのものの基礎研究を行ってきました。人間が本来持っている「音を聞き分ける力」を最大限活かせるように、補聴器でサポートすることを目指しています。これを当社では「ブレインヒアリング・テクノロジー」と呼んでおり、『Zeal』には膨大な音のデータを学習させた高度なAIである「DNN(ディープ・ニューラル・ネットワーク)」が搭載されています。

福澤: 脳本来の「音を聞き分ける働きをサポートする」という考え方について、具体的にはどのような聞こえを目指しているのでしょうか?
齋藤: 例えば、こうして福澤社長とお話ししている今も、空間には換気扇の音などがずっと鳴っていますよね。でも、会話に集中しているとそうした雑音は気にならなくなる。これは、脳が状況に合わせて無意識に情報を選別し、必要な音だけに集中しているからなんです。
オーティコンでは、音を必要以上に制限するのではなく、会話とともに周囲の環境音も含めて、自然なバランスでより良く、より明瞭に届けることを重視しています。

福澤: あえて音を消さない、ということですか?
齋藤: そうです。周囲の音情報をAIに学習させた情報に基づいて自然なバランスで届けることで、装用者ご自身が必要な音に注意を向けやすくするという考え方です。そうすることで、例えば正面の人と会話中にふと横から気になる話題が聞こえた時にも、そちらへ注意を切り替えやすくなることが期待できます。
福澤: なるほど。補聴器が音を勝手に消すのではなく、本来の「脳の働き」をサポートしてくれるわけですね。
齋藤: おっしゃる通りです。さらに『Zeal』では、従来の当社の補聴器よりも低い周波数(低音域)の音までカバー領域を広げています。これにより音に深みが出て、音楽や動画などもより豊かな音でお楽しみいただけるようになっています。
次世代の音声配信技術「Auracast™」対応&急速充電。外出時の利便性に配慮した機能
齋藤: 今、音楽の話が出ましたが、『Zeal』は先進の「Bluetooth LE Audio」を採用しており、通信機能も非常に優れているんです。今後普及が見込まれる「Auracast」という次世代の通信システムにも対応しています。空港や駅といった公共施設のアナウンスを直接補聴器で受信できる環境が広がれば、外出時の情報取得をサポートする選択肢になると考えています。

福澤: 海外だと、すでにオペラハウスなどでもAuracastが導入されていますよね。日本でも対応する劇場や映画館が増えていけば、補聴器ユーザーの生活はもっと豊かになりそうです。
齋藤: ええ。さらに『Zeal』はアンテナを外に出しているため、通信の安定性に配慮した設計となっており、よりスムーズに高音質な音を届けることができます。当社の専用アプリ『Oticon Companion』をお使いいただければ、スマートフォンから目立たずにボリューム調整などが簡単にできるので、ぜひ併用していただきたいですね。

福澤: 外出時の電池切れを心配される方もいらっしゃいますが、『Zeal』のバッテリー持ちはどうでしょうか?
齋藤: わずか2時間でフル充電でき、最大20時間お使いいただけます。*1万が一充電を忘れた時や、時間がない朝でも、15分充電するだけで約4時間の装用が可能です。*1スマートチャージャーが付属していますので、外出先でも素早く充電していただけますよ。
福澤: なるほど。ワイヤレスイヤホンのようにケースを持ち運んで手軽に充電できるなら、外出時にも使いやすそうですね。

補聴器選びは認定補聴器専門店へ。手に取りやすい『Zeal 3』も近日発売
齋藤: 補聴器は単に製品を買って終わりではなく、購入前の丁寧なカウンセリングとフィッティング(調整)が必要不可欠です。お客様にとって最適な一台は、ご本人の好みだけでなく、聞こえの状態や、身体的な能力なども含めて総合的に判断する必要があります。だからこそ、福澤社長のような認定補聴器技能者がいる専門店で、じっくりご相談いただきたいですね。
福澤: そうですね。例えば身体的な能力でいうと、手先の器用さや視力に不安がある方の場合、かえって小さすぎる補聴器は扱いづらいケースもあります。また、どれほど高機能であっても、ご自身のライフスタイルに必要な機能でなければ十分に活用しにくい場合があります。私たちはそうした状況を細かくヒアリングし、お客様が納得できる補聴器選びを全力でサポートさせていただきます。
もちろん、カウンセリング後は一定期間のお貸し出しを行い、実際の生活で「本当にご自身に合うか」をしっかりご確認いただいた上でご購入を検討いただけます。

齋藤: そして、『Zeal』をより多くの方に体験していただきたいという思いから、近日、さらにお求めやすい価格帯の『Zeal 3』も発売予定です。目立ちにくいコンパクトな形状はそのままに、音質や雑音抑制の度合い、調整の細やかさを一部抑えたモデルとなっています。機能と価格のバランスを重視したい方に検討いただきやすい選択肢です。
福澤: 「目立ちにくいデザイン」と、脳が必要な音に自然に注意を向けやすくする「自然な聞こえ」を追求し、既製品の手軽さとオーダーメイドイヤピースの選択肢を兼ね備えた『Zeal』。補聴器に抵抗感をお持ちの方にとっても、検討しやすい選択肢の一つになりそうですね。これまで補聴器をためらっていた多くの方々にも、このような素晴らしい製品が届くことを期待しています。

*1)充電池の稼働時間は、使用パターン、使用機能、聴力レベル、聴取環境、電池使用年月数、ワイヤレス機器使用状況によって異なります。